思想革命

本や漫画、自身の体験なんかを基にした、ちょっとした知識や思想を書いています。

人間はどこから来たのか、どこへ行くのか【書評】

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こんにちは、一歩です。

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」 

 ゴーギャンの絵画の作品名になっていて、「人類究極の問」ともいえるこの言葉は、我々の「人間そのもの」に対する知的好奇心を非常に喚起します。

特に僕は、人類史の本が大好きで、今まで50冊くらいは読んできました。

人類史から、文明の発祥や人間の行動パターンを学ぶと「人間とは何か」という問いに迫っているようで、とてもわくわくします。

 

 というわけで、今日はこんな本を読んでみました。

人間はどこから来たのか、どこへ行くのか (角川文庫)

人間はどこから来たのか、どこへ行くのか (角川文庫)

 

 この本は筆者が様々な分野の研究者を取材して、「人間とは何か」を探っていく形式で書かれています。

 

人間の脳は目先の利益に弱い?

 

「マシュマロテスト」は知っていますか?

幼稚園児にマシュマロを一つ渡し、実験者が部屋を数分空ける間に食べるのを我慢したらもう一つあげるといって、子供たちの行動を調べたものです。追跡調査の結果、マシュマロを我慢できた子は我慢できなかった子よりも社会的に成功しているとかいないとか。

要するに、目先の小さな利益をとるか、我慢してより大きな利益をとるかの判断です。

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この本の筆者が訪ねた研究者の一人、大阪大学社会経済研究所の田中沙織さんによると、人間の脳は目先の利益を主に見るところと、将来の利益というものを考慮して行動をとるところがそれぞれ違う場所に存在しているらしいです。

そして、基本的に私たちは目の前の報酬を重視する傾向にあると。

「私たちの脳のなかでは、目の前の報酬、目の前のおいしい物と将来の報酬、将来のおいしい物っていうのはじつは、将来のほうがその価値が下がってしまうんです。ですので、同じ大きさの報酬があるとすると、目の前の報酬のほうが一日後や一ヶ月後の報酬よりも価値は大きいというふうに考えているわけです。」

引用:人間はどこから来たのか、どこへ行くのか

 

 

合理性とはなにか

 

私たちは目の前の誘惑に弱いのだ。しかし、これは決して不合理な判断というわけではない。目先を重視する判断は、将来が保証されていない世界では、きわめて合理的なのだ。

引用:人間はどこから来たのか、どこへ行くのか

本の筆者のこの言葉を読んだとき、僕の中で衝撃が走りました。

これまでは、僕の中で「合理的な判断」というと目先の誘惑に負けず、最も利益の多い判断をするというイメージがあったからです。

しかし、言われてみればたしかにそうです。

将来が保証されていなければ、目の前の誘惑に耐えたところで報酬が得られないかもしれないのです。であれば、目の前のものはさっさと手に入れてしまったほうが得策でしょう。

 

 

現代社会に通じるもの

 

 ここまで読んだ方の中にはもしかして

「目先を重視する判断が合理的なんて、食料が限られていて天敵がうじゃうじゃいる大昔の時代の話でしょ。現代はちがうよ。」

と考えている人がいるかもしれません。

しかし、僕はそうは思いません。

というより、その考えこそが古い考えなのではないかと思っています。

 

将来が保証されているという意味では、人類が農耕を中心に生活していた時代はよかったのかもしれません。農耕は食料の将来的な確保という点で革命的だったでしょう。

また、20世紀までのいわゆる「労働社会」もそうでしょう。個人が一旦仕事に就くと、基本的には職業を変えることはなく、収入も年功序列で上がり続ける。

つまり、将来の予測がしやすい時代においては、「合理性」と「目先の重視」はかけ離れたものになるのです。

 

しかし、現在は時代の分岐点にあります。

 テクノロジーの進歩があまりにも速すぎて、未来の予測が非常にしにくいのです。そして、収穫加速の法則によって「テクノロジーが進歩する速度」自体も速くなっていきます。

テクノロジーの進歩は、当然ながら社会にとても大きな影響を与えます。

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特に、AI(人工知能)の分野では、2045年頃にはシンギュラリティ(技術的特異点)が起こり、AIが人間の知能を超えるといわれています。

 そうなった以降の予測は誰にもできないのです。

 

 

今こそ目先の利益を重要視すべき

 

未来の予測が非常に難しい現代でこそ、目先の利益を優先すべきではないでしょうか。無駄に先のことを考えて不安がっていても仕方ありません。

目の前の目標に向かって突っ走りましょう!!